機内で出会った和菓子
Bostonで開催された学会での帰国の途、New Yorkから帰国便に搭乗した。JFK空港を午後1時30分に出発したので、日本に向かう約13時間のフライトの間中、ずっと昼間であった。つまり太陽を追いかけつつ、飛行機は成田を目指していたことになる。これこそ「日出る国」への憧れであろう。機長の説明によると、眼下に見えるアラスカの山々の美しさは、滅多にないほどの視界の広さであるという。冒険家直巳さんが死亡したマッキンレー山もアンカレッジの市内もくっきりと目に飛び込んできた。
旅の楽しみは、機内でサービスされる食事である。今回の機内食では、デザートに和菓子が供された。和菓子の名は、「朝汐」。丸みのある形、甘さを控えた味、後味を残さないさっぱり味。いずれも合格点であった。とはいえ、なぜ「朝汐」とネーミングしたのかも不思議であるが、和菓子の形状から思い浮かぶ連想が何かに思い至らなかった。
さてこの名ではピント来なかったが、添えられた竹の袋に「彩雲堂」とあり、よもや出雲の和菓子ではと客室乗務員にお尋ねすると、その通りであった。異国から帰国の徒で、懐かしき郷里に出会えた嬉しさはこの上ない。
昔から人々は思いも掛けない場所で、郷里を懐かしんだ。有名な逸話であるが、石川啄木が上野駅で、「訛りなつかし」と感じたのは、明治時代に農家の次男、三男が職を求めて大都市へ集中したからであった。昭和になり、山口百恵が歌う「ディスカバージャパン」では、高度経済成長期に農漁村の働き手の大多数が現金収入を求めて大都市へと吸い寄せられたからであった。時は、グローバル時代。その昔であれば、思いもしなかった日本からニューヨークまでが13時間で到着できる近さにある。航空会社の機内食担当者の選択基準を知らないが、
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