「釜山-福岡フォーラム 2007」開催
-釜山-福岡「協力体」形成に向けて-
9月1日(土)、東西大日本研究センターと九州大韓国研究センターが共同で主管する「釜山-福岡フォーラム」が福岡にて開催された。本フォーラムは、国境を越えた隣接都市間の協力と共同発展を目的に、韓国側共同会長の張聖萬東西学院設立者、金鍾烈釜山日報社長、日本側会長の石原進JR九州社長をはじめとする両都市のオピニオンリーダー22名が中心となり、2006年9月に発足した。今回が2回目となるフォーラム総会では、「交流から協力へ」という創立大会のテーマを受け、「釜山-福岡協力体形成のために」というテーマが掲げられた。これは日韓海峡圏協力を強く訴える創立精神を実践するための具体策を模索しようという意志を表したものである。
本フォーラム韓国側幹事の張済国東西大副総長(日本研究センター所長)によると、今回の会議の成果は大きく二つの軸で構成されているという。先ず一つ目は、釜山および福岡市民から両都市間の経済協力体形成に対する支持を導き出そうという合意である。これは何よりも肯定的な世論形成が必要だと見るためである。そしてもう一つの軸は、両都市間協力体形成のための体系的な準備を始めることへの合意である。このため本フォーラムは、両都市の公務員、学界および産業界の専門家らが参加する協議会の設立を提案している。協議会が設立されると、両都市間の協力体形成による経済波及効果および法的・行政的支援策が検討され、段階的実践ロードマップ作成のための専門的な調査、研究がなされることになる。
また、今回のフォーラムでは、2009年を「釜山-福岡友情の年」とする案も提示された。両都市間の戦略的協力に向けた世論形成のために、釜山-福岡の行政交流都市協定が締結されてから20周年になる2009年を、両都市の本格的な協力時代の幕開けとして対外的にも打ち出そうというのである。それにより両都市間の移動人口が増加し、相互の経済的利益に繋がれば、両都市間の経済協力体形成に対する市民の支持も高まるだろうという判断である。その他にも、両地域に所在する大学間のコンソーシアムを通じ、比較優位を持つ教育プログラムを共有することにより、両地域の学生たちのためにより質の高い教育サービスを提供すべきだとする案も提示された。フォーラムの日本側会員である梶山千里九州大総長は、このようなコンソーシアム構築を論議するための「釜山-福岡所在大学総長会議」の開催を提案し、注目を集めた。
午前の第一部「フォーラム会議」に続き、午後には第二部「公開シンポジウム」が行われ、500名を越える福岡市民が参加する中、吉田宏福岡市長と許南植釜山市長がそれぞれ歓迎の挨拶と祝辞を述べた。その中で両都市の市長は、このフォーラムで提案された内容を尊重し、「友情の年」指定を積極的に検討するという意思を表明した。公開シンポジウムでは市民から多様な意見が出され、これに対する両側会員たちの真摯な答弁と討論が行われた。続いて行われた閉幕式では、今回の会議結果を整理した「福岡宣言」が採択され、フォーラムは幕を閉じた。
この日採択された福岡宣言文の主要内容は以下の通りである。1)釜山-福岡両都市の行政交流都市締結20周年に当たる2009年を「友情の年」と指定し、多様な交流計画を推進する。2)釜山-福岡間の協力体を実現するため、行政・企業・教育機関・医療などの情報を提供する拠点を設置する。3)釜山-福岡所在の大学間の「大学コンソーシアム」設立を提案する。また、産官学で構成された協議会の設置運営を検討する。
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釜山-福岡フォーラム発表要旨①
「経済分野における両都市・両国の課題-日韓両国における国土計画を踏まえて-」
久保田勇夫(株式会社西日本シティ銀行頭取)
本フォーラムでは、当面の両都市の懸案のみならず、日本および韓国の国家政策についても取り上げるべきである。なぜなら、釜山-福岡両都市間の具体的な取り組みが成功するためには、両国の国家政策を視野に入れていく必要があるからである。また、先進地域である両都市は、それぞれの国の国家政策の策定にも積極的に貢献すべきだからである。
日韓両国の国土開発計画には次のような共通点がある。第一に、「開発中心主義」に重点を置いた国土開発計画が政府主導によって実施されてきた点である。日本の場合は、1950年代に制定された「国土総合開発法」に基づき、1962年より5回にわたり、ほぼ10年ごとに国土開発計画が策定されてきた。一方、韓国の場合は、朴正煕政権の1972年「第3次経済開発5ヶ年計画」とリンクする形で第1次国土総合開発計画が始まった後、10年単位で国土計画が実施されてきたのである。第二に、国土計画が経済発展という肯定的効果とともに、首都圏へヒト、カネ、情報などが集中する「集積の不利益」という否定的現象をもたらした点が挙げられる。第三に、このような否定的現象を補うために政策転換をした点が挙げられる。日本の場合、計画の重点を「成熟社会型の計画」と「国家と地方の協同によるビジョン作り」に切り替え、これと共に「国土総合開発法」を2005年に「国土形成計画法」へ、「全国総合開発計画」を「国土形成計画」へと名称変更した。韓国の場合は、2003年に発足した盧武鉉政府が経済5ヶ年計画を「国家均衡発展政策」に変更させ、政策目標に「共に暮らす均衡発展社会」を掲げて、技術と人材、文化を成長の原動力とする「革新主導型地域発展」を推進した。
以上のような共通点を持つ新たな日韓の国土計画と関連し、釜山と福岡は二つの都市間の連携と協力関係の推進、国際社会および東アジアに対する貢献、そして両国の首都であるソウルと東京との関係などを検討しなければならない。まず、両都市間の協力関係は、経済・文化・スポーツ・学術交流、人的・物的交流、そして知的交流および協力の促進などを通じて築くことができる。次に、東アジアとの関係強化は、東アジアのアイデンティティー模索、アジア共通通貨構想、ヒトとモノの支援の効率化などを通じて可能である。最後に、首都圏との関係強化は、FTA、税関協力協定、地域間格差の是正、そして国の行政のあり方に対する検討などを通じて可能だと言えよう。
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釜山-福岡フォーラム発表要旨②
「釜山-福岡大学間協力と教育の世界化」
姜南周(朝鮮通信使文化事業会執行委員長、前釜慶大学校総長)
急激なグローバル化は地球上のあらゆる分野に甚大な影響を及ぼしており、教育部門もその例外ではない。しかし、教育機関の保守性と硬直性により、グローバル化する世界に歩調を合わせた人材育成が難しいのが昨今の状況である。このような中、この地域の国際化教育を推進する上で、釜山-福岡に所在する大学間の協力が持つ意味と可能性について考えてみる。
まず、韓国と日本における教育の現実は、グローバル化の波とは非対称的だと言わざるを得ない。韓国の場合、国内では競争力ある教育を受けられないため、海外への人材流出が深刻な問題となっている。逆に日本の場合は、若者が海外留学をあまり好まないため、世界で活躍できる人材の育成に少なからず困難が生じている。
このような問題を乗り越え、グローバル化に能動的に対応することのできる国際人を育成するためには、現在の教育制度と教育内容に変化が求められる。そのための方法として、第一に「疎通の教育」、すなわち外国語および多文化理解教育を強化すべきである。第二に「チャレンジ精神」の扶植が必要で、第三に、大学間の関係が既存の「競争」から「シナジー的融合」関係に変化しなければならない。国際人を養成するための以上のような方法は、釜山と福岡に所在する大学がそれぞれの比較優位を見つけ出し、互いに協力して共同教育と研究を遂行する戦略的提携を通じてこそ実現するのである。
釜山と福岡所在の大学間にコンソーシアムが形成されれば、以下のようなことが可能になるであろう。大学間単位交流、「疎通の教育」の第一歩である教員の相互交換、大学間文化交流、そして、COE・BK21・NURIなどの事業を国際的コンソーシアムで企画・構成することでシナジー効果を極大化させることなどである。このようなコンソーシアム構築のため、「釜山-福岡両地域大学総長会議」を早い時期に開催することを提案し、この会議が定例化されることを期待する。
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